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ひと育座談会 vol.3

人材の確保や従業員の人材育成など、多くの中小企業が共通した悩みを抱えるなか、
先進的な取組みを行う様々な企業の担当者のディスカッションを通して、
解決に向けたヒントを提供します。

今回のテーマ

社員を“応援”し、育てる企業

今回、お話いただくのは、障害者が戦力として活躍する金属塗装業を営む平下塗装株式会社の平下洋子氏と、0.001ミリ単位での精度が求められる自動車や航空機・ロケット部品の生産過程で不可欠な定規(ゲージ)を製造する渡辺精密工業株式会社の山田真嗣氏に、社員が成長するために企業として何が必要なのかを話し合っていただきました。

対象企業のお二人
平下塗装株式会社 総務取締役 平下洋子氏
渡辺精密工業株式会社 製造部 品質保証部 部長 山田真嗣氏

異なるモノづくりをする2社に共通する想い

まずは事業の紹介をお願いします。
平下氏
弊社は金属製品の粉体塗装をメインにして事業を展開しています。コンビニ等の陳列棚や格子ネット等の什器物の塗装が得意ですね。特に長尺物の製品が塗装できるのが特徴です。
幅氏
平下塗装株式会社
総務取締役 平下洋子氏 社員は会社の宝と語る平下氏。夫で社長の学氏とともに、時には工場長的存在として、時には母親的存在として、社員一人ひとりをわが子のように、愛情を注ぎ、日々、全力でぶつかっている。
山田氏
弊社は今年で創業70年となります。自動車関係と航空宇宙関係の部品を計測するゲージを中心に、治工具、金型部品等を作っております。0.001ミリ単位の精度を求めるお客様の要求に対し、正しく使用でき、使いやすい製品とサービスを提供することをモットーとしております。
今枝氏
渡辺精密工業株式会社
製造部 品質保証部 部長  山田真嗣氏 製造部の部長として、品質を守り続けるとともに社長の寺西正明氏の右腕として、人材育成に力を入れる同氏。情熱に溢れ、力強い語り口調は、若い社員にとって父親的な存在にもなっている。
どのような雇用システムですか?
平下氏
障害者を大きな戦力として採用しているという特徴です。現在は健常者が2人、ベトナムの実習生が6人、重度知的障害者が8人、知的障害者が8人、身体障害者が1人、精神障害者が1人と半数以上が障害者の子達です。先代の頃から障害者雇用を行っており、昭和55年から40年近く働いてくれている社員もいるんですよ。アットホームな雰囲気でそれぞれが相手を認める「お互い様」という気持ちと言葉を大切にしながら頑張っています。
山田氏
弊社は終身雇用を前提としており、70歳を超えた社員も働いてくれています。製品の特殊性が高いので、ほとんどの方が会社に入ってからモノづくりを一から勉強するので、文系・理系には特にこだわらず、モノづくりに携わりたいという思いが強い方を採用しています。
どのような採用活動されるのでしょうか?
平下氏
障害者の雇用には、親御さん、行政と会社の連携が不可欠です。ですので、親御さんとの面談を重視します。そして採用が決まると、これまで本人の周りでサポートしてきた支援センターの方々と接し、その中でその方の生活状況も含めた情報をお聞きして、その方に合っているであろうと思われる作業を、実際に働いてもらいながら慣れていってもらうことが多いです。
近年、平均年齢が少し高齢化してきたので、2年前から若いスタッフを少しずつ雇用し始めています。
山田氏
採用にあたり弊社では最初から会社の良いところも悪いところも全て伝え、納得した上で次の選考に進んでもらうようにしています。食事会なども含め、採用までに多ければ5~6回程度お会いして話をして会社のことを理解してもらうようにしています。お互いのミスマッチを避けることも理由ですが、その裏側には、私達が日々取り組んでいることへの自信があるからです。ちなみに、2013年から昨年までの新卒10名の離職は0%です!

人を大切にする企業の人づくり

どのような社員教育を行うのでしょうか。
平下氏
作業自体は非常にシンプルですので、基本的には見て覚えてもらう形をとっています。先輩社員の作業を見ていると、ほとんどの従業員が自分で仕事を覚えてくれます。もちろん、障害の内容により全ての社員がそうではありませんので、必要なことは私達もフォローをしています。どのような障害があっても、その方にできることは必ずあります。ウチは作業ができないからといって社員を解雇したことは一度もありませんね。
山田氏
学生さんには、入社決定後、3か月ほどは図面を読むための通信教育のほか基礎的な知識などをつけるサポートを行います。また、入社後は必ず年齢の近い先輩社員をメンターとしてつけ、フォローを行っています。メンターになった先輩社員が日報に、アドバイスや回答を自分の為(ため)に丁寧に記録する場面を見たりしていると、自分の中にやる気や責任感が生まれてくるようです。またこうした行為を通じ若い先輩社員自身も伸びていくことができます。仕事だけでなく心の教育も行いながらフォローしています。
社員を伸ばすための評価方法はありますか。
平下氏
以前は社長が一人で作業内容やレベルを決めていましたが、今は、私も含めた数人で決めるようにしております。障害を持っているからと言って特別扱いはせず、給与も本人の仕事内容に合わせて決めています。
山田氏
弊社では、「成長シート」という評価表でかなり細かく社員を評価しています。「成長シート」は、仕事内容・レベル・目指すべき内容などが明文化されており、5段階で評価します。
半年に一度、各自が「成長シート」で自己評価を行った後、関係部署の管理者全員が集まり、評価の正当性を項目のひとつひとつを確認します。評価後は、2点を3点にする為(ため)には何が必要でどうすれば良いのかをアドバイスし、成長支援を行います。社員にとっても半年ごとの目標が立てやすくなりスキルアップへの近道になっているようです。
平下氏
なるほど、ウチでは、社員を評価するシートはありますが、点数化はしていませんでした。確かにこの方法の方が社員も管理者もわかりやすいので、すぐに導入してみます!
社員の成長に向けたモチベーションアップの方策はありますか。
平下氏
ウチは何というか、社員みんなが「空気」のような存在になっています。悪い意味ではなく、そこにいて当たり前の存在なんですよね。ですので、誰かが休むと皆で気にかけ、心配しています。
そんな社員が楽しみにしているのは、様々な社内行事ですね。特に社員旅行は大切にしていますね。いろいろな所にも行きましたし、以前に船を貸し切ってクルージングをしながらフランス料理を楽しんだこともありました。みんな本当に喜んでくれていましたね。
山田氏
様々な事を行っています。例えば、資格の取得、セミナーへの参加や仕事に関係する書籍の購入など、自分達が勉強をしたいと思ったときは、会社が費用を負担し応援する仕組みを作っております。
うちは本当に社員同士の仲が良くて、社員旅行などの社内行事も参加率が全く強制していないのに脅威の90%越えなんですよ。やはり、社員全員でのコミュニケーションは団結心とモチベーション向上につながると思います。

今後に向けて

人を育てていく上での目標を教えてください。
平下氏
これまでもこれからも社員とのコミュニケーションを大切にしていきたいです。できたときは素直に褒める、ありがとうと伝える。時にはケンカをしながらでも、ぶつかっていきます。我が社にとってコミュニケーションは非常に大切なツールですからね。障害があるために、自分で自分の磨き方が分からない人が多い。それを見つけて輝かせる!私達はそれを応援していきたいです!
山田氏
今いる社員達が10年後に自分の理想に近づいていてもらえるような仕掛け作りをしていきたいです。アレもコレもと詰め込むのではなく、社員のスキルアップのために本当に必要なことを臨機応変に提供し、手助けができる仕掛けを作っていきたいです。
私は今の社屋が完成したときに、あまりの綺麗(きれい)さに感動すると同時に本当に嬉(うれ)しく誇らしかった。何年後になるか分かりませんが、社員の皆さんにも私と同じ気持ちを味わってもらいたい。自分の仕事に誇りを持ってもらいたいです。その為(ため)に人を育てる。社員達に幸せになってもらうために指導し教育をしていく。それが私の目標であり応援です。

対談後記

事業内容は異なるが、従業員を本当に大切にしている両社。お二人とも社員のエピソードの話をする時の楽しそうな顔が、とても印象的でした。みんなが仲よく、みんなで成長し、会社はその応援をする。心のこもったモノづくりをするには、人間づくりが基礎であることを実感する取材でした。

撮影地 : 渡辺精密工業株式会社 本社