愛知県内で開催され、一般を対象にしたスキルアップ・キャリア形成に役立つ研修・講座等を探す。
対 象
分野
レベル
実施場所
地図で確認する
キーワード検索
期間検索
開催日
開催日
参加費
 
インターシップ・職場体験のキャリア教育の支援企業/団体を探す
活動内容
対象
所在エリア
地図で確認する
受入れ可能時期

業種
キーワード検索
国、県が表彰、認定、登録した企業/団体(「かがやく☆あいちの表彰・認定企業」)を探す
所在地
地図で確認する
主な事業分野
表彰・認定など実績
我が社の自慢
キーワード検索

かがやく☆あいちの表彰・認定企業

障害者雇用優良企業

平下塗装株式会社

一般企業でありながら障害者が戦力。安定した雇用を続けてきました。

平下塗装株式会社

陳列棚やディスプレイ棚など大型の什器を中心に、長尺物、棚板、格子ネットまでなど、あらゆる金属製品の表面塗装を行っている。社員の7割以上が障害者で、戦力の中心となって工場を支えており、2005年に「障害者雇用優良企業」として表彰を受けた。

平下塗装株式会社
平下洋子
レポーター

日本福祉大学健康科学学部リハビリテーション学科 樋江井美里さん
レポーターの学校名、学年等は取材時点(平成28年4月)のものです。

「障害者雇用優良企業」とは?

障害者の雇用促進と職場定着を推進することを目的とした認定制度。日頃から障害者雇用に深い理解があり、その雇用に率先して努めている企業を愛知県が表彰しています。

Q.工場で働くほとんどの方が障害者でしたが、雇用を始めたきっかけは?


「皆さんがプライドを持ちいきいきと働いている姿が印象に残る」
先代の義父が、今の大府市鉄工団地に会社を移転してきたときに雇用したのが最初だと聞いています。雇用を増やしたのは、現在の2代目社長が会社に入ったときのこと。それ以来、平下塗装の主力は障害者です。会社の横に支援施設をつくる構想も義父にはあったそうですが、平下塗装で働くのは、きちんと社会保険を払い、社会に貢献をするプライドのある子たち。だから「ウチに入った子は最後まで面倒を見る」というポリシーのもと、一般企業であり続けることにこだわり、現在は19人の障害者を雇用しています。一方で、障害者は様々なトラブルに巻き込まれることも珍しくなく、そのたびに警察や行政に掛け合ってフォローしています。
Student's view
工場では、重度知的障害から精神障害、身体障害など、いろいろな障害を抱えた方が働いていました。金銭や交際トラブル、仕事をめぐる大げんかなど、様々な事件の話に圧倒されてしまうのですが、すべて受け止める平下さんの「この子たちがかわいくて仕方ない」という言葉に胸を打たれました。

Q.なぜ、そこまで一生懸命になれるのでしょうか?


「笑顔を絶やさないこと、人の話に耳を傾けること」という曽祖母の言葉を守り続ける。
私の母方の家系はお寺で、私は尊敬する曽祖母から、いろいろな教えを授かりました。笑顔を絶やさないこと、人の話に耳を傾けること、五体満足で生まれたことへの感謝として“分け与える”こと――。学生の頃にタイピストの資格を取っていた私は、卒業後、ワープロ教室を受け持つことになるのですが、そこで出会った若い子たちに衝撃を受けた訳です。知的障害やうつ病の子、シンナー中毒の女の子はかわいらしい顔を土気色にしていました。「ウチで更生させれば、元に戻れるから」と、母親にその子を引き取りたいと訴えたこともありました。結局それは叶わなかったのですが、せめて休み時間や休日を一緒に過ごしていたある日、真っ黒に染めた髪と爽やかな顔で「先生、おはよう」と言ってくれて。嬉(うれ)しかったです。ちょうどその頃に結婚が決まり、嫁いだ先が平下塗装だったのです。
Student's view
今の取り組みにつながる体験が、平下さん自身にもあったのだと知りました。「あの子たちのおかげで、私たちもやっていけている」と、真っすぐな感謝の心が伝わってきました。

Q.これから目指していきたい企業像はありますか?

次の息子たちの代になれば、また企業カラーも変わるかもしれません。一人でも多くの障害者の子たちが社会に出られるのなら、将来的には、作業所のような施設をつくってもいいかもしれないと思います。今すぐにできることとしては、実際に障害者を雇用して経営をする私たちが、他の企業に向かって「一度、障害者を雇用してほしい」と声をあげること。最低賃金に見合う仕事ができなければ、最低賃金減額制度という仕組みもあります。電話の出かたが上手ではないかもしれないけれど、平下塗装のありのままを知る取引先なら理解してくれるし、そういう会社と取引していることを誇らしく思います。
Student's view
障害者雇用に関する講演会に出たり、社内では新しい企業形態を考えたりしながら、より多くの障害者の方が働ける環境をつくることに尽力されていました。

Q.障害者雇用を進めるために、どんなことが必要でしょうか?


工場内を案内してくださる平下さん、会社、従業員を大切にしている気持ちが伝わってくる
障害者雇用優良企業として評価された理由のひとつが、障害の重さに関わらず能力を適正評価していることです。重度の知的障害でも仕事ができれば最低賃金をきちんと支払うし、でなければ何%ならできるのか、算出した数値を行政に提出して、最低賃金を減額します。ただ、その数値を出すのは本当に難しい。そこを簡単にすれば、もう少し雇用率も上がるのではないでしょうか。障害者を雇用しても、賃金に見合う利益が生み出せずに定着しない一般企業は多くあります。減額を批判する人もいるけれど、企業は利益に見合わない雇用はできません。そうした問題を、一つひとつ国が取り除いていく必要があると思います。
Student's view
最年長の方は2016年で勤続35年だそう!制度を駆使しながら「最後まで面倒を見る」というポリシーを貫き、長く安定した雇用を続けている平下塗装はすばらしい会社だと思いました。
編集後記

平下さんは、以前に「障害者雇用の助成金で儲かっているのでは?」と言われた経験もあるそう。ですが「それならば」と社員のための社員旅行を開催することにしたそうです。大阪のユニバーサル・スタジオ・ジャパンへ行ったり、貸し切りクルーズで、ふだんは食べる機会のないフランス料理をみんなで食べたり。社員の方々は、1年に1度のこの行事を本当に楽しみにしているそうです。障害者雇用だけでなく、一人一人のことを母親のように見守り、障害者の生きる社会をよりよくしたいと行政にも働きかける平下さんの情熱に感銘を受けました。